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2011年10月9日日曜日

「自転車泥棒」の可笑しみ / 「禁じられた遊び」のつまんなさ /「マルタの鷹」えぐいぜ

ジョブスに弔意を表した後に何を書けばいいのか迷った。親爺が去年の3月に亡くなった直後、書いたのは彼の「評伝」。ただただ、色んな事も浮かんできて、自分の親を評するのは早すぎるんだと言うことも書いているうちに解って来た。だから、評伝の前半のようなところで、中断している。ブログの2010年3月の「親爺の94年」をご参照ください。
ジョブスの個人史、アップルの社の歴史、シリコンバレーのパソコン文化史に近い書物は結構読んでいるので、「スカリー」というジョブスに「砂糖水いつまで売ってるの??」と、アップルに呼ばれ、ジョブスを後に追放することになったジョンスカリー元ペプシコーラ会長の自伝も確か読んだはずだ。

亡くなった人は偉大すぎて、また、公人でもあるので、僕は何も書くことはないし、何か書こうとも思わなかった。で、でだよ。何を書こうかと思ったら、目の前のハノイのデスクに日本から持ってきた500円DVD「自転車泥棒・禁じられた遊び」でも見て書こうと心が定まった。一昨日は衣笠貞之助監督の「地獄門」見た。何回見たか覚えていない「モロッコ」、たぶん見ていない「上海特急」、何回も買ってしまった「カサブランカ」、久しぶりの「マルタの鷹」も、いっしょに並んでるので、ここいらのもの書いておこうと思いつつ、当校の新パンフレットの原稿も書かなくてはいけないし、お客様へのアドバイスの長文メール、「日本社会の基本学」の資料の整理と教案も本日中にしなければいけないらしい。


さあ、コーヒー、この一年、好きになったインスタントコーヒーでも煎れようか(お湯さそうか)。デ・シーカ作品だものコーヒー飲みながらがいいよね。「生きていれば、何とかなる」だって、切ないねえ。ポスターからして、暗くなるなあ。このお父さんは世の中の不運を一心に背負っているようでつらいね。出だしの新興の団地がでてくるのが、わりと好きで、フェリーニとか、アントニオーニの「太陽はひとりぼっち」でモニカビッティが彷徨う団地も似た風情であったような。それはいいとして、このお父さんがのんびりと「リタヘイワース」のポスターをべたべた糊で下手にはってるところから、「たかだか自転車」を文字通り血眼で探すことになる。たぶん、7〜8回は見ているので、次のシークエンスのお気の毒が全部解る分だけ、コーヒーを飲みながら溜息が出る。お父さんも子供も役者でなく素人らしい。このブルーノという子供が不思議だね。顔は大人だし、貧しくてもおしゃれだし、親爺より、しっかりしている、探す勘やポリスを連れてくるタイミングなど、大人以上だね。

流石はデ・シーカだね、当時イタリアで強大な力を持っていたキリスト教や占い師、共産党や労働組合のいざという時の冷たさや好い加減さを揶揄して、捜索は進む。つまり何よりも大切な自転車を盗まれ、どうにも絶望しながら、親子で彷徨う時、誰が親切で誰が意外にだめなのかを順番に処理しているのがすっきりさせて解りやすい。映画のシナリオの方法の一つです。整理し解りやすい所と混沌部分のバランスを作ること。しけた顔して空腹で居ても、解決しないねとお父さんがちょっと高額そうなイタメシ屋に連れて行く前後は泣けるね。なんか、近年貧乏続きの僕など、他人とは思えない親爺の「むちゃなやさしさ」だ。イタリアリアリズモの名作群の中で「ミラノの奇蹟」も良いし「鉄道員」も「無防備都市」もいいさ。だけれども絶望の中の「おかしみ」を、画面を見つめている僕らにそっと見せてくれる名画中の名画だね。よく「救いがある」という言い方もあるようだけれど、これはそれではない。絶望の中には滑稽さもあるってところかしら。

後半、探し求めて売春宿まで追いかけてきた後、500円のDVDは、やっぱり、500円。画面が止まってしまって、早回しなどでレーザーに刺激をあたえながら、ちょっとは進んだが、犯人らしい青年の自宅周りに近所の暇な御仁があるまり、警官が来たあたりで、進行の命脈がつきて完全停止。大切な「自転車泥棒」のシーンとその後、夕景の中を不運な父子が行く大切で、もっとも観客のヒューマンな「正常性バイアス」かかるシーンを見れなかったのだ。でも、それも良いかもね、あのシーンはもう、見なくても良いのかも知れない、イメージとして僕の記憶の底に永遠に定着しているようだし・・と自分では了解して、エジェクトのキーを押した。

■「禁じられた遊び」は、監督はルネ・クレマンだよ。ナルシソ・イエペスじゃあないぜ。大好きな「太陽がいっぱい」の監督だよ。だけれど、僕は前から何となく思って居るのですが、名画とは言えないのであります。名画とか優れた反戦映画と言われる割につまんない。でもそれってよくありますよね。実は今回見た回数を考えたのですが、たぶん3回目。名画のわりに回数が少ないね。なぜかと言うと、済みません、僕の心に感動の波がキチンと伝播してこないのです。ブリジットフォッセーが幼児なのにやけに色っぽいのがちょっとこまります。また、隣人との仲違いもコミカルな味もだせず、ただただ、ナルシソ・イエペスのギターだけが感動のザル掬いをしている印象。ふーむ。困った名画です。 ハノイで名画座は・・つづきます・・次は地獄門とマルタの鷹かな・・

■ということで、「マルタの鷹」。えぐい、の一言だね。監督はあの「ロイビーン」などの老練なイメージのJ・ヒューストンの初監督作品で、ハンフリーボガードの出世作、とライナーノーツに記されている。サスペンスのスピード感が今でも快感。今から70年前の映像とは思えない歯切れの良さなのだ。ボガードが私立探偵というはまり役もらって、開花した作品なんだと思う。翌年の「カサブランカ」に繋がる作品といっていいだろうね。タイトルだけで、一回は見ていたつもりであったが、お初に食すことになった。納得の安価DVDと言うことです。ともかく、えぐいんです。

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